
不動産経営では、投資用物件の管理を管理会社に依頼することが一般的です。管理委託費用は経費になりますが、できる限り安いほうが収益があがると考える人も多いことでしょう。
しかし、安い価格には何かしらの理由があります。安さのみで管理会社を選んでしまうと、投資用物件の資産価値を下げるような事態になってしまうかもしれません。
管理業務には「入居者管理」と「建物管理」の2つがある

まずは管理業務の内容について、改めて見てみましょう。管理会社が請け負う管理業務は、大きく2種類に分けられます。
ひとつは、入居者の募集、賃貸借契約の締結や更新、家賃の徴収、滞納した場合の督促、退去の際の手続きや精算、原状回復の確認、入居者からの苦情対応といった「入居者に関する管理」。
もうひとつは、物件の共用部の清掃、建物や設備の点検、建築基準法や消防法で定められている法定点検、修繕が必要になった際の手配といった「建物の管理」です。
管理会社への業務委託費用の決め方は、管理会社によって異なります。多くの場合は「家賃収入の数%」あるいは「建物管理の定額+家賃収入の数%」となっていることでしょう。
管理委託費用は、委託している限り毎月かかります。この部分をコストカットできれば、その分だけ収入が上がるので、「なるべく安い管理会社に委託したい」と考えるのは当然のことでしょう。
管理委託費用を安くする方法としては、管理業務のすべてを委託するのではなく、一部のみにすることが考えられます。たとえば物件の日常的な清掃や設備点検、入居者からのクレーム対応はオーナー自身が行い、そのほかの専門的な業務のみを委託するなら、管理費用は引き下げられることでしょう。
ただ、管理業務をオーナー自身が行うのは負担が大きいものです。また業務を細かく区切ると、管理会社と密に連携をとらなければならないことも増えて、より負担が背増すことにもなりかねません。
近年では、管理費用の安さを謳った管理会社が増えてきています。しかし、依頼する管理会社を選ぶ際には「なぜ管理費用を安くできるのか」の理由をよく見極めないと、思わぬ失敗につながってしまうのです。
管理費用が安い理由を見極めて、管理会社を選ぶ

管理会社への委託費用の相場は、家賃収入の5%程度といわれています。それよりも管理委託費用を安くできる理由としては、いくつかの可能性が考えられます。
たとえば、家賃保証会社を利用することで、入居者に関する管理業務の負担を少なくしているケースです。入居希望者と賃貸借契約を結ぶ際に、家賃保証会社との契約を必須にして、家賃の回収や滞納した際の督促を家賃保証会社が行うようにすれば、管理会社の業務は少なくなります。
家賃保証会社への保証料は入居者負担なので、考えようによっては、管理費用の一部を入居者が肩代わりしているともいえるでしょう。
管理する物件数を増やすことで、1件あたりの管理費用を引き下げているケースもあります。いわゆる薄利多売なのですが、常駐管理をしてもらえない、1件ごとの巡回回数が少なくなるといったデメリットも少なくありません。
管理が行き届いていない物件は、見た目に清潔感がない、クレーム対応が遅いといった理由で入居者が居着かず、空室率が上がってしまうことも。場合によっては、修繕が必要な箇所が放置されて建物が傷み、資産価値が下がってしまうことも考えられます。
同じ薄利多売でも、不動産会社が管理会社を兼ねている場合は、管理業務そのもので収益を上げることを考えていないケースもあります。メインの収入は管理物件から上がる賃貸仲介手数料で、管理業務は仲介した物件オーナーへのサービスという位置づけだと考えると分かりやすいでしょう。
管理会社の中には、ハウスメーカーやリフォーム業者が母体となっているケースもあります。管理している物件の修繕工事や、入居者が退去した際の内装リフォーム工事を主な収益源としているパターンです。
投資用物件が築古なら、修繕会社を母体とする管理会社を選ぶと安心でしょう。しかし中には、喫緊でない修繕を必要だと偽って、工事費用を上げようとする悪質な会社もあるので注意が必要です。
一口に管理会社といっても、得意とする業務や専門にしている分野はそれぞれ違っています。価格だけで選ぶのではなく、物件の特徴に合わせて管理会社を選ぶのが得策といえるでしょう。
また、数%の管理委託費用の差を気にするよりも、空室率を下げたほうが収益は上がります。管理費用が多少高めでも入居状況が好調ならば、あえて管理会社を変更するリスクをとらないほうが賢明です。