
不動産投資は一般的に、投資ローンを組んで行うものです。手元にまとまった現金があったとしても、それを頭金にして投資ローンを組んだほうが、より大きな資金が用意できるからです。
ただ、手持ちの現金のみで行う不動産投資にも、実はメリットがあります。特に相続税対策としては、非常に有効だと言っていいでしょう。
投資用物件を現金で購入すれば、ローンの利息分が節約できる

手持ちの現金のみで投資用物件を購入する一番のメリットは、ローンの金利負担がないことでしょう。
金融機関でローンを組んだ場合、必ず利息を払わなければいけません。借入金額が大きくなればなるほど、支払わなければいけない利息も増えてしまいます。
投資ローンの利息分は経費として計上できますが、それでもお金が出ていくことに変わりはありません。手持ちの現金のみで購入した場合、同じ金額をローンで借りるよりも利息分だけ節約できるといえます。
ほかにも、投資用物件の現金購入にはメリットがあります。ローンを組むには審査を受けなければならないので、売買契約を結ぶまでに時間がかかってしまいます。
現金購入なら、ローン審査を待つ必要がありません。お得な投資用物件を見つけたらすぐにでも契約が可能なので、タイミングを逃すことなく購入できます。
築古物件の場合、評価額が低いためにローン審査が通りにくくなるケースがあります。そういった物件でも手持ちの現金があれば、ローンを組むことなく購入できます。
投資用物件の中には、物件価格が数百万円程度ものもあります。そういった物件をローンで購入すると、利息がかかる分、収益が出にくくなってしまいますが、現金購入なら収益を上げることも可能でしょう。
もちろん、現金購入でのデメリットもあります。一番大きい問題は、手持ちの現金に余裕がなくなり、トラブル対応などが難しくなることでしょう。また手持ちの現金額にもよりますが、購入できる価格の物件は数が限られてしまいます。
ただ、投資ローンをくんでの購入と現金購入のどちらも視野に入れることで、購入できる物件の幅が広がることでしょう。手持ちの資金に余裕がある場合は、現金購入も考えてみてはいかがでしょうか。
投資用物件の現金購入は、相続税対策に有効という理由

手持ちの現金での投資用物件購入は、相続税対策として非常に有効だといいました。その理由をご説明しましょう。
相続税がいくらなのかを求める場合、現金以外の財産はすべて金銭に換算して計算します。その際、不動産の金銭的価値は実際に売買されている「実勢価格」ではなく、相続税評価額が適用されます。
相続税評価額は基本的に、実勢価格の80%程度の金額になるよう設定されています。つまり、実勢価格が5000万円の不動産なら、相続税評価額は4000万円程度ということです。
相続する遺産が現金5000万円の場合、相続税はその5000万円に対してかかってきます。しかし、その現金で購入した5000万円の不動産を相続するなら、相続税評価額4000万円に対する相続税しか支払わなくて済むのです。
なぜ相続税評価額は実勢価格よりも低いのかというと、不動産は実勢価格の把握が難しいからです。5000万円の物件だと思っていても、実際に売ってみると5500万円で売れたり、4500万円にしかならなかったりといったことが珍しくありません。
5000万円の物件だと思って課税したのに、実際に売却したら4500万円でしか売れなかったら、相続税の取り過ぎになってしまいます。そういった事態を防ぐため、相続税評価額は実勢価格の80%程度になるよう設定されているのです。
さらに投資用物件の場合、その物件を借りて住んでいる人がいるため、大家であっても物件を自由に使えるわけではありません。そのため投資用物件の相続税評価額は「借家権割合」といって、自宅よりもさらに30%下がります。
こういった理由から、「不動産投資は、相続税対策になる」といわれているのです。
投資用物件の現金購入を考えるなら、築古で立地のいいマンションが狙い目といえます。担保評価が低くなりがちなのでローン審査が通りにくい傾向はありますが、その分、実勢価格も手ごろで相続税評価額も抑えられるので、思った以上の利回りや節税効果が上がることでしょう。