「デッドクロス」という言葉をご存知でしょうか。不動産投資でいうデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ることで、気をつけるべきポイントのひとつとなっています。
デッドクロスはなぜ起こるのか、どうして気をつけるべきなのか、デッドクロスの対処法について、この機会に知っておきましょう。
デッドクロスになると、黒字倒産もあり得る
デッドクロスは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回った状態だといいました。投資ローンを利用して不動産投資を行っていれば、いつかは必ず起こることといってもいいでしょう。
多くのローンは「元利均等返済」といって、毎月の返済額が一定になるよう調整されています。毎月の返済額に占める元金と利息の割合を見ると、借りた当初はの利息分のほうが多く、返済を続けていくうちに利息分の支払いが減って、元金返済分が大きくなっていきます。
ではその元金返済額が、ローンで購入した投資用不動産の減価償却費を上回ると、何が問題になるのでしょうか。
投資ローンを利用して物件を購入した場合、ローンの利息は経費に計上できますが、元金返済額は経費に計上できません。しかし毎月の返済で、手元の現金は確実に減っていきます。
減価償却費は、物件の金銭的価値がどれだけ下落したかを表したもので、経費として計上できます。しかし、実際に手元の現金が減ってしまうわけではありません。
減価償却費は、建物の耐用年数によって経費に計上できる期間が決まっています。期間を過ぎると、減価償却費の分だけ計上できる経費が少なくなるので、帳簿上は所得が増えたことになってしまいます。
つまり、毎月手元から出て行く金額に変わりはないのに、帳簿上では所得が増え、所得税の金額が上がってしまうのです。
デッドクロスが起こると、ローン返済や納税など現金のやりくりが難しくなります。最悪の場合、帳簿上では利益が上がっているのに、手持ちの現金が足りず破綻してしまう「黒字倒産」という結果になることもあり得るのです。
デッドクロスに備える対策は?
デッドクロスの対策としては、いくつかの方法が考えられます。ひとつひとつ見ていきましょう。
よく「節税目的の投資なら、築古物件がおすすめ」というアドバイスを耳にします。これは、同じ価格の新築物件と築古物件なら、築古物件のほうが減価償却期間が短いため、経費として毎年計上できる減価償却額が大きくなるからです。
しかし減価償却期間が短いということは、デッドクロスも早く起こるということ。減価償却期間が長い新築物件のほうが、デッドクロスが起こる時期を先延ばしできるといえます。
そもそも投資ローンを利用せず、自己資金のみで不動産投資をするなら、デッドクロスは起こりません。投資ローンを利用するにしても、自己資金の割合をできる限り増やしたほうが、デッドクロス対策になります。
自己資金の割合が多ければ多いほど、毎月のローン返済額は少なくなります。するとデッドクロスが起こっても、影響を少なくできることでしょう。
また投資ローンを組む際に、元利均等返済ではなく、元金均等返済で契約をするという方法もあります。元金均等返済は、元金の返済額がずっと一定になるため、元利均等返済よりもデッドクロスの時期を先送りにできます。
ただ元金均等返済は、返済開始当初は利息分も合わせた返済額が高く、年月が経つにつれて返済額が少なくなっていくものです。そのため、当初は返済の負担が大きいことを覚悟しておかなければなりません。
デッドクロスは、投資ローンを利用して不動産投資を行うなら、いつかは必ず起こるものといいました。ですから必要以上に恐れず、あらかじめデッドクロスを見込んで対策しておきたいものです。
デッドクロスに備えて手持ち資金を用意しておくのもいいでしょう。あるいはデッドクロスを売却に適したときだと考えて、出口戦略を練っておくのもひとつの方法です。