
マイホームの買い換えで旧宅を売却したとき、購入した価格よりも高く売れると、収益分の譲渡所得税を納めなければいけません。収益が3000万円以内なら「3000万円の特別控除」で非課税にできますが、収益額がそれ以上だった場合は、どうしたらいいのでしょうか。
そんな時に利用できる「マイホームの買い換え特例」についてご説明します。
マイホームの買い換え特例は、非課税になる制度ではない

マイホームの買い換え特例は、正式には「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。これは、譲渡所得税の納付時期を先送りにする制度で、非課税になるわけではありません。
譲渡所得とは、売却価格から購入した価格や売却にかかる諸経費を差し引いた金額をいいます。通常ならこの譲渡所得に対して、所得税15.315%、住民税5%、合計で20.315%の税金がかかります。
納付期限をいつまで先送りにできるかというと、買い換えで購入した新居を売却したときまでです。つまり、買い換えたマイホームに住み続ける限り、譲渡所得税を納めなくていい、ということになります。
マイホームの買い換え特例が適用できるのは、所有者が10年以上住んでいたマイホームを買い換えた場合のみです。別宅や別荘には適用できません。
すでに買い換えた新居に引っ越していて、旧居の建物は解体してしまい、土地だけを売却することもあるでしょう。その場合でも、取り壊しの前年までで所有期間が10年を超えていて、取り壊してからは駐車場などほかの用途に使わず1年以内に売却、という条件を満たせば適用できます。
そのほかにも以下のような細かい適用条件があります。
・売却した金額が1億円以下であること。
・売却した相手が親族ではないこと。
・売却した前年から翌年までの3年間の間に新居を購入していること。
・購入した新居には、その年の年末までに入居していること。
・2年以内に「3000万円の特別控除」「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」「マイホームの譲渡損失についての特例」を利用していないこと。
また、買い換えで新たに住む住宅に対してもの、以下のような条件があります。
・購入した新居の床面積は50平方メートル以上、敷地は500平方メートル以下であること。
・新居が新築住宅の場合は、一定の省エネ基準を満たしていること。
・省エネ基準に満たない新築住宅の場合は、2023年末まで建築確認を受けるか、竣工が2024年6月30日以前であること。
・新居が築古住宅の場合は、築25年以内であること。
マイホームの買い換え特例を利用する際の注意点

マイホームの買い換え特例の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。その際にはさまざまな添付書類が必要になるので、あらかじめ税務署に問い合わせて書類をそろえておきましょう。
またマイホームの買い換え特例は、「3000万円の特別控除」などのほかの特例とは併用できません。新居の購入に住宅ローンを利用していても、買い換え特例を適用した場合は住宅ローン控除が受けられません。
ですから旧居の売却で収益が出てしまった場合は、「3000万円の特別控除」と「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を利用するほうがいいのか、マイホームの買い換え特例を選ぶのか、よく考えて選択したいものです。
繰り返しになりますが、マイホームの買い換え特例は「譲渡所得税の納付期限を先送りにする」制度です。買い換えた新居を将来的に売却することになった場合、旧居と新居の両方の譲渡所得税を納付することになることも、しっかりと覚えておきましょう。
なお現在のところ、マイホームの買い替え特例が適用できるのは、2023年12月末までに旧居を売却したケースのみとなっています。
ただ、マイホームの買い換え特例は本来2019年12月31日で終了予定でしたが、税制改革で2年間の延長を2回繰り返してきました。2024年以降も延長される可能性があるので、今後の動きを注視しておきましょう。