住宅ローンを利用してマイホームを購入した人の多くは、住宅ローン控除を利用していることでしょう。
住宅ローン控除と同じように所得税・住民税を減税できるものに、ふるさと納税があります。そのためか「住宅ローン控除とふるさと納税を併用すると損をする」と言われることがありますが、本当にそうなのでしょうか。
見出し住宅ローン控除とふるさと納税の仕組み
住宅ローン控除とふるさと納税を併用するとどうなるのかを考察する前に、それぞれどんな制度なのか改めて振り返ってみましょう。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の0.7%にあたる金額を、所得税から差し引くことができる制度です。所得税から引ききれなかった金額については、最大9万7500円を住民税から差し引くことができます。
ふるさと納税は、「納税」と名付けられてはいますが、実質は地方自治体への寄付金です。任意の自治体を選んでふるさと納税をすると、寄付額の最大30%にあたる返礼品もらえます。
また、ふるさと納税で寄付をした金額から2000円を差し引いた分は、所得控除や住民税の控除が受けられます。例えば3万円のふるさと納税をした場合、2万8000円を所得や住民税から控除できるのです。
住宅ローン控除とふるさと納税は、どちらも税額が安くなることに変わりはありませんが、差し引くタイミングが少々違います。まずは確定申告をすると仮定して、詳しく見てみましょう。
確定申告をする場合、ふるさと納税の影響はどうなる?
確定申告で所得税額を計算する場合、まず給与収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」、不動産収入から経費を差し引いた「不動産所得」などの所得をすべて合計し、総所得金額を出します。
総所得金額から、社会保険料や生命保険料、医療費などのさまざまな所得控除を差し引いた金額が、課税所得です。所得税は、この課税所得の金額に対してかかる税金です。
ふるさと納税の2000円を超える寄付額は、所得控除のひとつ「寄附金控除」にあたります。つまり、3万円のふるさと納税をすれば、課税所得が2万8000円少なくなるのです。
所得税は、課税所得の金額に対して5~45%の変動税率で計算します。ですから、課税所得が少なくなれば、所得税も安くなるのです。
住宅ローン控除は「税額控除」といって、上の計算で導き出された所得税の額から、さらに金額を差し引く制度です。計算された所得税額が、住宅ローン控除の金額よりも高かった場合は、ふるさと納税と併用しても損をすることはありません。
所得税額が住宅ローン控除額よりも少なかった場合、所得税から引ききれなかった住宅ローン控除分は、住民税から差し引くことができます。しかし、住民税から差し引けるのは最大で9万7500円と定められています。
つまり、ふるさと納税の控除額を所得から差し引いた結果、所得税額が住宅ローン控除額よりも9万7500円以上安くなってしまうと、住宅ローン控除の効果が薄くなってしまうということです。
確定申告をしない場合のみ利用できるワンストップ特例制度
実はふるさと納税の控除を受ける方法として、「ワンストップ特例制度」という方法もあります。これは「会社員や公務員で給与以外の収入がないため、確定申告をしない」「ふるさと納税の寄付先が1年間で5自治体以内」という条件を満たしている場合のみ利用できる制度です。
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税を行った全額が、住民税から控除されます。所得からの寄附金控除はされないので、課税所得や所得税額が減ることはありません。
つまり、ワンストップ特例制度が利用できれば、ふるさと納税をしても住宅ローン控除の効果は変わらないということです。
ただし、ワンストップ特例制度を利用するには、ふるさと納税を行うたびに「ふるさと納税ワンストップ特例の申請書」を寄付先の自治体に提出する必要があります。一部の自治体では、オンライン申請も受け付けています。
もっともふるさと納税は、返礼品と税額控除を合わせれば寄付額以上の見返りが受けられるようになっているものの、節税のための制度ではありません。それだけは忘れないようにしたいものです。