
住むつもりのない遠くの実家など、相続で必要のない不動産を所有してしまうことは珍しくありません。場所によっては、売りに出してもなかなか買い手がつかない場合もあります。
「不動産の処分に困ったら、自治体に寄付してしまえばいい」と考えてはいませんか? 実は不動産の寄付は、意外とハードルが高いものなのです。
寄贈先によっては、さまざまな税金がかかってくることも

不動産は、所有している限り固定資産税がかかってきます。さらに空き家を放置したため近隣に迷惑がかかった場合は、管理責任を問われることになります。
そのため、「無料でいいから地方自治体に引き取ってほしい」と考える人もいるでしょう。しかし、不動産の寄贈を受け入れてくれるケースは非常に限られています。
自治体としては寄贈を受け入れてしまうと、その分だけ固定資産税の税収入が減ってしまいますし、不動産を管理する手間や費用もかかります。そのため「公民館にする」「職員住宅にする」といった具体的な使用目的が決まっていないと、受け入れてくれないことがほとんどです。
では、町内会などの地縁団体や、公益法人への寄贈ならどうでしょうか。こちらも自治体と同じように、有効活用ができそうだと判断されれば寄贈を受けてもらえることもありますが、やはり難しいと言っていいでしょう。
さらに地縁団体や公益法人に寄贈する場合、不動産の取得時から寄贈するまでの間に物件の価格が上がっていると、その差額を譲渡所得とみなされて課税されることがあります。
なぜなら、寄贈する側が不動産を現金化して、その金額を寄付したのと同じと見なされるからです。これを「みなし譲渡所得」といい、寄贈する側が譲渡所得税を支払うことになります。
ほかの寄贈先としては一般企業が考えられますが、受け取った側が不動産価格分の贈与を受けたとみなされ、贈与税を支払う必要があります。
贈与税は物納が認められていないので、税額分の現金を用意する必要があります。同時に、寄贈した側にも譲渡所得税がかかってきます。
これらの条件を考えると、寄贈先を見つけるのも大変なことが分かるでしょう。
相続を放棄しても管理責任が問われるケースも

そもそも、必要のない不動産は相続しなければいいと考えるかもしれません。相続が発生してから3ヵ月以内に相続放棄の手続きをとれば、要らない不動産を相続しなくてもよくなります。
ただし、遺産の一部だけを相続放棄することはできません。相続放棄の手続きをとると、要らない不動産以外の遺産もすべて放棄することになります。
さらに相続放棄をしても、不動産の次の所有者が決まるまでは、管理責任を負わなければなりません。複数の相続人がいて、全員が相続放棄の手続きをとった場合、最後に手続きをした人が管理責任を負うことになります。
もっとも、管理責任を負うのは「現に占有している者」となっています。たとえば東京に住んでいる息子が、奈良の実家を相続放棄したといったケースでは、管理責任を問われることはないでしょう。
じつはこういった「相続した遠方の不動産を放棄したい」というニーズは、次第に増えてきています。その結果、管理の行き届かないまま放置されている不動産が増えると、土地の無有効活用に支障が出てしまいます。
その対策として、2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」が始まりました。相続で得た土地を国に寄贈できるという制度です。
ただ、寄贈できるのは土地に限られていて、建物がある場合は取り壊してからでないと申し込みできません。申し込みにも審査手数料が必要ですし、申請しても却下される場合があります。
加えて、申請が承認されると土地は国が管理することになりますが、申請者には10年分の管理費用が請求されます。これは、本来その土地を管理するべき人が、管理責任を免れるのだから、金銭的な負担を負うべきと考えられているからです。
いずれにせよ、要らない不動産を相続してしまうと、面倒なことになるとお分かりいただけたことでしょう。不動産の処分に困った際には、価格を下げてでも売却するのが賢明ではないでしょうか。