
不動産オーナーなら、入居者との賃貸契約を結ぶときには、事前に入居審査を行うものでしょう。審査では、入居希望者の収入や職業を見ることが一般的ですが、それ以外にもチェックしておきたい項目があります。
入居審査のチェックポイントについて、改めて見直してみませんか?
入居希望者の収入の合格ラインは家賃の36倍

入居者を募集して希望者が現れた場合、「入居申込書」といった書類に記入してもらうことでしょう。入居審査は、この入居申込書に書かれた項目で行うことになります。
ただ、一般的な入居申込書で分かることは、それほど多くありません。入居者の年齢や現住所、職業や勤務先、勤続年数、年収くらいです。
入居申込書で見るべき項目は収入でしょう。この場合の収入は、手取りではなく額面で判断しますが、家賃が滞りなく回収できるかどうかの分かれ目といってもいいでしょう。
不動産業界では、家賃の36倍以上の年収が合格ラインといわれています。例えば家賃10万円の物件なら年収は360万円、家賃が15万円なら年収480万円以上でないと、家賃滞納リスクが高くなるということです。
職業や勤続年数を重視するオーナーもいますが、現代では転職やリストラも珍しくなくなりました。どんなに勤続年数が長くても、入居してすぐに退職してしまう可能性もあります。
反対に無職であっても、収入の合格ラインと同じ家賃の36倍以上の貯蓄額があれば、少なくとも1年間は家賃の滞納を心配する必要はないといえます。入居希望者が無職やアルバイトの場合は、貯蓄額を聞いて判断してもいいでしょう。
物件オーナーの中には、入居の際に賃貸保証会社との契約を義務づけていて、賃貸保証会社の審査が通るかどうかを入居審査の代わりにしている人もいます。でもこれは、あまりおすすめできません。
賃貸保証会社は、家賃回収の可否しか判断していません。そのため、収入以外の判断ポイントが抜け落ちてしまいがちだからです。
入居の希望理由や入居希望時期もしっかりチェック

入居申込書に書かれた内容で、つい見落としがちな項目があります。項目は、入居を希望する理由と、入居希望の時期です。
入居希望の理由に「通勤時間短縮のため」とあるのに、現住所と通勤時間がさほど変わらない、といったつじつまの合わないケースには注意が必要です。別の理由を隠していることがあるので、説明を求めたほうがいいでしょう。
また、入居希望時期を「最短」と書いている場合は、現住所でトラブルを抱えている可能性があります。反対に「2ヵ月後」など気の長すぎる申し込みも、キャンセルになるリスクが高いといえるでしょう。
入居審査の際には、入居希望者の人柄や性格も知っておきたいものです。もちろん入居申込書だけでは判断できないので、できれば面接を行って、身だしなみや態度、言葉遣いをチェックしておきましょう。
たとえば入居者が近隣トラブルをひんぱんに起こすような人物だと、周囲の入居者が退去してしまったり、長期入居が見込めなくなったり、最悪の場合は物件が下がってしまうこともあり得ます。一般的な常識を身につけている人物なのか、面接でチェックしておきたいものです。
賃貸契約を結んでいいのか不安があるときは?

入居希望者に対する不安が残る場合は、賃貸保証会社との契約に加えて、連帯保証人を立ててもらうのもひとつの方法です。
たとえば入居者がトラブルを起こして、本人に注意しても改まらなかったとしましょう。連帯保証人がいれば、そちらに連絡して連帯保証人からも注意してもらうことができます。
連帯保証人を立てる場合は、連帯保証人の収入証明もしてもらったほうがいいでしょう。連帯保証人の収入合格ラインも、入居者と同じく家賃の36倍の収入が目安です。
どうしても不安が消えず、入居を拒否したい場合もあるでしょう。ただ、あまり審査期間が長すぎると入居希望者も住居が決まらず困ってしまうので、なるべく早く決めたいものです。
入居を拒否する場合は、オーナーから入居希望者に直接伝えるのではなく、仲介した不動産会社を通すようにしましょう。不動産会社は入居審査不合格の通達にも慣れているので、うまく伝えてくれるはずです。
また、入居審査のために書いてもらった入居申込書、住民票や収入証明書といった書類は、コピーも含めてすべて入居希望者にすみやかに返却します。
近年は、個人情報の取り扱いが厳格になってきています。不動産会社やオーナー側で「処分しておきます」というと、「ほかの目的に利用するのでは?」と不信感をもたれてしまうことも。
賃貸契約を結ぶにしろ断るにしろ、なるべくスマートに作業を進めて、お互いに遺恨を残さないようにしたいものです。