
2024年、物価上昇対策として1人あたり4万円の定額減税が実施されます。非常にありがたいことですが、住宅ローン控除を利用している世帯は、年末調整の還付金が少なくなる可能性が……?
定額減税が住宅ローン控除に及ぼす影響について、詳しく見てみましょう。
2024年6月から行われる定額減税とは?

政府は2024年6月から、世帯収入が2000万円未満の世帯を対象に、1人あたり所得税3万円、住民税1万円、合計4万円の定額減税を行うと発表しました。
4万円の定額減税は「1人あたり」なので、夫婦と子供1人の3人世帯なら合計で12万円の減税となります。
会社員の場合、毎月の給与から「源泉徴収」という形で所得税を支払っています。しかし、定額減税が行われる2024年6月の給与については、源泉徴収額が3万円少なくなり、その分だけ手取りが増えるのです。
毎月の源泉徴収額が3万円に満たない場合は、差し引ききれなかった金額を、7月以降の源泉徴収額から差し引いていくことになっています。扶養家族がいる場合は、扶養家族の分と合わせた金額が、源泉徴収額から差し引かれることになります。
住民税についても、会社員は毎月の給与から徴収されているはずです。それを2024年6月の給与では徴収されず、年間の住民税額から1万円を差し引いた金額が、7月から2025年5月までの給与から徴収されます。
自営業や個人事業主、不動産所得者の場合、所得税は基本的に確定申告をして支払っていると思います。そのため2024年分の確定申告をする際に、3万円の定額減税分が所得税から差し引かれます。
また自営業や個人事業主、不動産所得者は、自治体から届く納付書で住民税を支払っています。2024年は、その納付書がすでに定額減税分の1万円を差し引かれた金額になっているはずです。
定額減税は今のところ、2024年のみの特別措置とされていますが、今後の状況によっては追加の措置がある可能性もあります。
定額減税で住宅ローン控除がムダになる?

非常にメリットの大きい定額減税ですが、住宅ローン控除を利用している世帯の場合、年末調整や確定申告で戻ってくる還付金が少なくなってしまう可能性があります。
具体的に、以下のような家族を例に計算してみましょう。
・夫婦と子供2人の4人世帯で、妻と子2人は夫の扶養家族
・夫は会社員で年収500万円で、年間の所得税額は12万円
・2023年末時点での住宅ローン残額は3000万円で、2024年は21万円が控除される
定額減税がなかった場合、所得税12万円から住宅ローン控除の21万円が差し引かれて、所得税は0円となります。そのため年末調整では、すでに給与から徴収されていた12万円が還付金として戻ってきます。
住宅ローン控除は21万円ありますから、所得税12万円から差し引いても、あと9万円分残っています。その分は住民税から控除できるので、実際には住宅ローン控除分と同額の21万円が戻ってくることでしょう。
ところが定額減税が適用されると、夫と扶養家族3人の合計4人分12万円が減税され、給与から徴収される所得税額は0円になります。そもそも所得税が徴収されていないのですから、住宅ローン控除を利用しても還付が受けられません。
所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除の残額は、住民税から差し引くことになります。ただし上限金額があり、「前年度課税所得×5%、最大9万7500円」となっています。
結果、定額減税がなかったら年末調整で21万円の還付が受け取れたのに、定額減税があると9万7500円しか戻ってこないということに。つまり、住宅ローン控除の効果が薄くなってしまうのです。
もちろん給与の手取り金額は、家族4人分の定額減税額16万円が増えます。しかし、年末調整の還付金が少なくなることを織り込んでおかないと、家計のやりくりに失敗してしまうかもしれません。
現時点では、定額減税で住宅ローン控除の効果が薄くなることについて、対応する政策は発表されていません。今後、新たな給付などが発表される可能性もありますが、このまま一切のフォローがないと考えて対策をしておいたほうがいいでしょう。