
不動産投資家の中には、個人名義で投資するのではなく、会社を設立して投資や物件の運用を行っている人がいます。
会社名義で不動産投資を行った場合、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでチェックしてみましょう。
法人名義で不動産投資を行うメリット

昔は会社を設立するというと、資本金を確保したり、役員となる人材を集めたりとさまざまな手間がかかり、簡単にできることではありませんでした。しかし2006年、会社法が約50年ぶりに大規模改正され、会社を取り巻く状況が変わったのです。
中でも大きな変化は、会社設立に最低限必要な資本金の額が1円からになったこと。その結果、「個人より会社として行ったほうが得だ」と判断すれば、すぐにでも会社を設立できるようになりました。
では、不動産投資のための会社を設立すると、どんなメリットがあるのでしょうか。
会社組織で不動産投資を行うメリットのひとつは、赤字を最大10年間繰り越せることでしょう。投資用物件を運用していると、大規模改修や耐震化リフォームなどで赤字が出ることがあります。
個人が副業で行っている場合、不動産投資で出た赤字分は本業の収入から差し引いて申告できます。しかし、赤字分が本業の収入よりも多かった場合、それ以上差し引くことができません。
たとえば投資用物件の運用で、500万円の赤字が出たとしましょう。本業の給与所得が300万円だったなら、赤字を差し引いて「収入は0円」と申告します。引き切れなかった200万円分の赤字を翌年に持ち越すことはできません。
しかし会社組織の場合、赤字の繰り越しが認められています。たとえば会社の収益を計算したところ500万円の赤字になったとしましょう。その赤字は経費として、翌年の会社の収益から差し引くことができます。
さらに翌年の収益が300万円で、前年の赤字分500万円を差し引ききれなかったとします。その場合、真こった赤字分の200万円を、翌々年の収益から差し引くといったように、赤字の繰り越しができるのです。
会社組織として不動産投資を行うメリットは、ほかにもあります。それは収入にかかる税金の額です。
個人で不動産投資をしている場合は、収入に対して所得税がかかります。所得税の税率は収入金額によって違い、最大で45%の所得税がかかる仕組みになっています。
会社組織の場合、会社の収益に対して法人税がかかります。法人税の税率は、会社の種別や資本金の額によって違いますが、最大でも23.2%です。
所得税の計算では、収入が900万円未満なら税率は23%ですが、900万円を超えると33%に跳ね上がります。つまり、不動産による収益が900万円を超えるなら、会社を設立したほうが節税になるのです。
また会社を設立しておけば、利益の一部を退職金として積み立てておくといった福利厚生も行えます。大規模な不動産投資を行うなら、個人よりも会社を設立した方がメリットがあるといえるでしょう。
不動産投資のため会社を設立するデメリット

もちろん、会社を設立して不動産投資を行うデメリットもあります。一番のデメリットは、会社の運営に手間がかかることでしょう。
会社を経営していくには、手間だけでなくさまざまな経費もかかります。節税のため会社を設立してみたものの、収益額によっては個人名義で不動産投資をしていた頃よりも収入が少なくなってしまったというケースも珍しくありません。
会社員が副業として不動産投資をしている場合も注意が必要です。副業禁止の規定を設けている企業も多いので、不動産投資のために会社を設立するのは難しいと言っていいでしょう。
会社を設立しての不動産投資が認められた場合でも、注意すべき点があります。本業と副業の会社は全くの別組織ですから、不動産投資で出た赤字を本業の収入から差し引くことはできません。
また会社を設立するのには、さまざまな手続きが必要です。個人での不動産投資なら、始めるのもやめるのもわりと気軽にできますが、会社ではそういうわけにはいかないでしょう。
ここまで挙げてきたさまざまなメリット・デメリットを考えると、本業が自営業の人、投資の規模を増やしたい人は、会社を設立して法人名義で不動産投資をするメリットが大きいといえるでしょう。
会社員が副業として不動産投資をするなら、個人名義で行うことをおすすめします。