
不動産業界では一般的に、高齢者は賃貸住宅への入居が難しいといわれています。実際に、入居希望者が60歳以上だと、難色を示すオーナーも珍しくありません。
でも実は、高齢者に入居してもらうことで生まれるメリットもあります。高齢者に部屋を貸すことのメリットとデメリットを、改めて見てみましょう。
高齢の入居希望者が避けられてしまう理由

なぜ賃貸物件のオーナーは、高齢者の入居を嫌がるのでしょうか。その理由はいくつかあります。
ひとつは、定年を迎えて収入が年金のみというケースが多いこと。年金が十分な金額でなく、子どもからの仕送りなどに頼っている場合、家賃滞納のリスクが高まってしまいます。
また高齢になると、どうしても日常生活での注意が行き届きにくくなります。その結果、火事や水漏れといったトラブルを起こしやすいという印象をもつオーナーも多いことでしょう。
年をとるにつれて身体も次第に衰えてくるため、病気にかかりやすくなります。万が一、部屋で孤独死といったことが起こると、事故物件となり物件の資産価値が下がってしまいます。
さらに高齢者の場合、友人知人も同年代に偏っていることでしょう。そのため固定収入のある連帯保証人が見つけにくいというリスクもあります。
こういったデメリットが考えられるため、60歳以上になると賃貸住宅への入居が難しくなってしまうのです。
高齢者に入居してもらった場合のメリット

高齢の入居希望者は、決してデメリットばかりの存在ではありません。賃貸物件のオーナーにとっては、高齢者を受け入れるメリットもあります。
少子高齢化が問題になってからかなりの年月が経ちますが、今のところ解決のめどは立っていません。現在も人口に占める高齢者の割合は増え続けています。
「賃貸住宅に入居したい」という高齢者のニーズも、増加傾向にあります。つまり、高齢者をターゲットにしたほうが、入居希望者が集まりやすいといえるのです。
また20~40代の若い年齢層は、転勤などもあり、引っ越しの頻度が高くなっています。対して高齢者は引っ越しなどの生活環境の変化を好まない傾向があり、長期入居が見込めます。
入居希望者が集まりやすく、長期入居が見込めるということは、空室リスクの引き下げにつながります。もちろん入居時の収入審査は必要ですが、物件からの安定収入を目指すなら、高齢の入居者希望者はまさにぴったりともいえるでしょう。
さらに高齢者は仕事の定年を迎えているため、通勤の必要がありません。子どもも成人しているため、学校や進学塾といった教育面を考える必要もありません。
つまり、近くにスーパーマーケットや病院があるなど、一定の周辺環境が整っていれば、市街地へのアクセスが悪くても入居してもらえる可能性があるということ。加えて高齢者は、物件の築年数をあまり気にしないという傾向もあります。
近年では、入居者を高齢者に絞ったシニアホームも出てきています。それに伴い、入居者と定期的に連絡を取るような見守りサービスを提供している業者も増えてきました。
所有物件の空室リスクに悩んでいるなら、室内の段差をなくすなどバリアフリーにリフォームする、見守りサービスを利用するといった対策をとった上で、高齢者にターゲットを絞ってみるのもひとつの方法かもしれません。