
賃貸物件は、築年数が経つほど入居希望者が集まりにくくなるといわれています。そのため不動産投資では、築年数に合わせて賃料を下げることが一般的です。
でも、本当にそれがベストの空室対策なのでしょうか。賃貸物件に関するアンケートから、賃貸入居者の動向を探ってみましょう。
賃貸入居者は、建物の築年数をそれほど気にしていない

実は、築古物件だからといって空室率が高くなってしまうとは限りません。不動産業界ではおおむね築30年以上を築古といいますが、築古でも築浅と同じくらいの稼働率を保っている物件もあります。
賃貸入居者は、物件のどこを見て入居を決めているのでしょうか。全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)が毎年行っている「住居の居住志向及び購買等に関する意識調査」から見てみましょう。
アンケート内容は年によって多少の違いはありますが、「住宅を借りるときに重視するポイント」についてはほぼ毎年調査が行われています。2022年のアンケートに参加した人数は約2万3000人でした。
賃貸住宅を選ぶ際に重視するポイントは1人につき3つまで選択となっていて、一番多かった回答が家賃で64.3%。それに続いて、交通の利便性が39.6%、周辺環境が29.9%、間取りが19.8%、日当たりが18.3%となっています。
築年数が関係する「住宅の構造」を重視する人は、なんと6.6%しかいませんでした。つまり築古物件でも、ほかのメリットが充実していれば気にしない人がほとんどといえるでしょう。
賃貸入居者の収入や家族構成によって求められる家賃や間取りは変わってきますが、交通の利便性がいい、周辺環境が整っている、近隣に商業施設があるといった項目については、どんな入居者にもメリットとなります。
そういった条件が整っている物件なら、築古になっても家賃をそれほど下げずに済むと考えていいでしょう。
定期的なリフォームでニーズをさらに高める

ただ、交通の利便性や周辺環境、商業施設の有無などのポイントは、物件オーナーの努力だけではどうにもできません。また、いくらメリットの多い物件でも競合物件が多ければ、家賃を下げないと入居希望者が集まらないこともあります。
まず投資用物件を購入する段階から、これらのポイントを重視して選んだほうがいいでしょう。
さらに、いくら築年数は重視されないといっても、物件の見た目や設備が古いと避けられてしまうことも。上記アンケートで、「中古住宅に抵抗はあるか」という質問のトップ回答が「きれいであれば抵抗はない」で35.8%だったことからも読み取れます。
水回りやエアコンなどの住宅設備は、定期的にリフォームを行うことで、見た目のきれいさだけでなく使い勝手の良さも向上できます。近年はあまり好まれなくなった和室を、フローリングにリフォームするのもいいでしょう。
建物の外観も大切です。外壁がきれいだと築古でも印象がよくなるので、10~15年程度の周期で塗り替えを行い、美観を保つようにしたいものです。
もちろん、リフォームやリノベーションにはそれなりの経費がかかります。物件の状態によっても、リフォーヘムをしたほうがいいのか、家賃を下げて空室対策をしたほうがいいのかは変わってきます。
いずれにせよ目先の損得だけで考えるのではなく、長期的な視点で収支を考えて運営方針を決めることが大切でしょう。