空室が続く投資用物件を、民泊に利用するのはアリかナシか
2023年12月22日
近年、自宅や所有物件に旅行者を泊める「民泊」が注目されています。投資用物件を空室にしておくくらいなら、民泊で少しでも収入を得たいと思うオーナーも少なくありません。
でも、空室を民泊に活用するのは本当にお得なのでしょうか。ここで今一度考えてみましょう。
民泊とは、自宅の一部や所有物件を活用し、宿泊料をとって旅行者を泊めるサービスのこと。ここ10年ほどで注目度が高まってきましたが、そもそもの始まりは1964年の東京オリンピックの頃といわれています。
民泊の多くは、ホテルのような至れり尽くせりのサービスは提供しません。ただ宿泊スペースを貸すだけなので、宿泊料もホテルより安く設定することがほとんどです。
そこがリーズナブルに宿泊したいという外国人観光客のニーズと合致したのでしょう。近年では空家や空室の活用法として注目され、ネットで民泊先を紹介するマッチング業者がいくつも登場しています。
実は民泊は、長らく脱法状態が続いてきました。何の届け出もせず、個人がお金を取って旅行者を泊めるという行為は、「旅館業法」に抵触する恐れがあったからです。
しかし、すでに市場ができあがってしまっていることから、2017年6月「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されました。決められた設備を整え、届け出をすることで、年間180日までなら民泊が認められるようになったのです。
法整備をきっかけに、投資用物件を民泊に転用するオーナーが一気に増えました。今後はますます外国人観光客が増えると予想されているため、民泊のニーズは高止まりの状態が続くと考えていいでしょう。
投資用物件が空室になっているからといって、そのまま民泊に活用できるわけではありません。いくつか準備しなければならないことがあります。
空室のほとんどは、一切の寝具や家具がないことでしょう。少なくともベッドや布団を入れて、見られる状態にしなければいけません。
電気・ガス・水道などのライフラインが止まっているなら、各業者に連絡して開栓してもらう必要があります。民泊新法では、避難経路の表示や消火器など防火設備も整えてるよう定められています。
実際に民泊を始めてからも、さまざまなリスクが考えられます。
民泊を利用する人の多くは、外国人観光客です。対応するためには、ある程度の語学力も必要でしょう。民泊新法でも、宿泊者の利便性を確保するため、部屋の使用方法などを宿泊者が分かる言葉で説明することを求めています。
予約や鍵の受け渡し、滞在前後の部屋の清掃には、ある程度の手間がかかると考えておきましょう。また宿泊客からの問い合わせや苦情には、深夜早朝を問わず24時間対応しなければいけません。
外国人旅行者は日本の風習をよく知らないため、近隣の住民に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。宿泊者によっては部屋の使い方が荒く、物件の設備に損害が出てしまうことも。
そういった民泊にかかる手間を、すべて引き受けてくれる代行業者もあります。ただ代行業者に依頼すると、当然のことながら委託料がかかってしまいます。
たしかに民泊は、多少なりとも収入につながるので、空室にしておくよりもお得だといっていいでしょう。しかし民泊のデメリットも熟知しておかないと、「こんなはずではなかった」と思うことも少なくありません。
所有物件を民泊に活用する際には、リスクも十分考えて決めたいものです。