2023年11月08日
家や土地などの不動産を相続したら、相続登記を行わなければなりません。その手続きが、2024年4月から義務化されます。
今までも必要な手続きだったはずなのに、「義務化される」とはどういうことなのでしょうか。何が変わるのか、知っておきましょう。
相続登記が義務化された背景
相続登記とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を、相続した人の名義に書き換えることをいいます。法務局にある登記簿には、すべての不動産について所有者が誰なのか記載されているので、相続登記で名義を変更する必要があるのです。
じつはこの相続登記について、「しなければならない」と定めた法律はありませんでした。そのため、相続しても名義を変更していないケースが多発してしまったのです。
相続登記をするには、申請書類を作ったり、申請に必要な戸籍謄本などを集めたりするほか、登録免許税も必要になります。手間とお金がかかるため、面倒だと考える人も多かったのでしょう。
2018年に行われた国土交通省の調査では、不動産を相続した人の約67%が相続登記をしていないという驚くべき結果になりました。そこで、不動産登記法や民法など関連する法律を改正して、「相続登記をしなければいけない」と義務化されることになったのです。
不動産の相続登記をしないことで起こるトラブル
不動産を相続したのに名義変更を行わないでいると、さまざまなトラブルが起こることがあります。たとえば、不動産を持っている親が亡くなって、子供3人が相続人となったとしましょう。
遺産分割協議が終わって相続登記をするまでは、子供3人が不動産を共有していると見なされます。その状況で相続人のうち1人が亡くなると、亡くなった相続人の配偶者や子供に相続の権利が引き継がれます。
そういったことを繰り返していると、相続人がどんどん増えてしまいます。遺産分割協議をして相続登記をするには、相続人全員が同意していると証明しなければならないので、相続人が増えるほど面倒も増えてしまいます。
相続人の中に、借金があって返済が滞っている人がいる場合も、トラブルになりがちです、お金を貸している債権者は、借金のカタとして相続人の相続持分を差し押さえることができるからです。
差し押さえを解いてもらうには、滞っている返済分を債権者に支払わなければなりません。遺産分割協議がスムーズにいかなくなるだけでなく、最終的に不動産を相続することになった人が肩代わりをして親族の関係が険悪になるといった結果にも繋がってしまいます。
また、相続した不動産を売却したい、担保にしたいという場合はまず相続登記をして、所有者で誰なのか第三者に分かる状態にしなければなりません。誰のものか分からない不動産など、怖くて購入する人はいないでしょう。
不動産の相続登記は、必要な書類を用意するたけでもある程度の時間がかかります。購入希望者が現れても、相続登記の手続きをしているうちにタイミングを逃して、売れなくなってしまうことも。
トラブルを避けるためにも、不動産の相続が発生したらすぐに相続登記をしておきたいものです。
不動産登記の義務化で、何がどう変わるのか
2024年4月1日からは、不動産の相続登記が義務化されます。正確に言うと、「不動産を相続したことを知った日」から3年以内に相続登記をしなければならなくなるということです。
相続登記をしないまま3年間が過ぎると、10万円以下の過料が課されることになります。ただ、「過料」は行政上の罰なので、刑事罰と違って前科がつくことはありません。
ポイントは、「不動産を相続したことを知った日」から3年以内ということ。相続が発生した日ではないため、遺産分割協議が長引いてしまった場合は、分割協議が終わった日から3年以内に相続登記をすれば大丈夫です。
また、相続した人が重病などで手続きが難しい、相続登記に必要な書類を集めるのに時間がかかってしまった、相続人がストーカーDVなどから避難していて手続きができないといったケースでは、「正当な理由がある」と見なされて過料を課されることはありません。
注意しておきたいのは、相続登記が義務化される2024年4月1日以前に発生した相続についても適用されることでしょう。相続したのに相続登記をしていない場合、2024年4月1日から3年以内に相続登記をしなければなりません。
さらに2026年4月1日からは、住所や氏名の変更登記が義務化されます。引っ越したのに住所を変更していない、結婚で姓が変わったのに届け出ていないといった場合に、過料が課されることになります。
住所や氏名の変更登記の期限は、変更があってから2年以内です。課される過料は2万円以下となっています。
相続登記や変更登記の義務化に備えて、この機会に不動産の名義がどうなっているのか改めて確認しておくことをおすすめします。