不動産を共有名義にするメリットとデメリット
2023年10月11日
夫婦や親子など、複数の人が資金を出しあってひとつの不動産を購入することがあります。その場合、不動産は資金を出した人全員の共有名義になります。
ただ、共有名義にはメリットとデメリットがあることをご存知でしょうか。ここで改めて確認しておきましょう。
共有名義なら、税制上の優遇がさらにお得になることも
共有名義とは、ひとつの不動産に対して複数の人が所有者として登記されているれ状態をいいます。夫婦で資金を出し合ってマイホームを購入した、親の住んでいた家を兄弟姉妹で相続したといった場合に、共有名義で登記をします。
共有名義にする場合、出資した金額によって所有権の持分が決まります。例えば夫が3000万円、妻が2000万円を出資して5000万円の家を買ったとしたら、夫の持分は60%、妻の持分は40%となります。
共有名義のメリットといえば、所有権を持つ人全員が住宅ローン控除をはじめとする税制上の優遇を受けられることでしょう。
住宅ローン控除を受けるには大前提として、住宅ローンを利用してマイホームを購入していなければなりません。また、購入した住宅の床面積や、控除を受ける人の年収などの条件があります。
その条件さえクリアしていれば、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられます。借入額や持分の割合によっては、夫か妻の単独名義よりも共有名義になっているほうが、控除額が大きくなることもあります。
また、さまざまな事情でマイホームを売却することもあるでしょう。その際の「マイホーム売却時の特別控除」も、所有権を持っている人全員が受けられます。
こちらも住宅ローン控除と同じく、親戚ではない第三者への売却であること、過去3年間にマイホーム特例を利用していないことといった条件をクリアしていなければなりません。しかし単独名義より共有名義のほうが、控除額を増やせる可能性があるのです。
不動産の共有名義で考えられるデメリット
不動産を共有名義で登記するデメリットを見てみましょう。まず最初に挙げられるのは、ローン契約や登記にかかる手数料が増えてしまうことです。
住宅ローンのタイプにもよりますが、ペアローンの場合は契約手数料が2人分かかるのが一般的です。マイホームに対する抵当権の登記も、夫の持分と妻の持分それぞれに設定するので、登記費用も2人分かかります。
また共有名義の不動産は、所有権を持っている人全員の承諾がなければ売却できません。所有権の持分がたった1%だったとしても、その人が「売りたくない」と言い張ったら、その不動産は売りに出せないのです。
さらに、所有権を持っている人が亡くなると、その人の持分が相続の対象となります。残されたほうの所有者が唯一の相続人だった場合は問題ありませんが、自分の住んでいる家が遺産分割の対象になってしまう可能性もあるのです。
共有名義のメリットとデメリットを比較した結果、「夫婦で資金を出し合って家を購入したけれど、夫または妻の単独名義で登記したい」などと思うかもしれません。しかし不動産の名義は、出資金額の割合に従って分割しなければならないと定められています。
夫と妻が半額ずつ出し合って家を購入したのに、共有名義ではなく妻の単独名義で登記したとしましょう。すると、夫が出した分の金額が妻への贈与と見なされ、贈与税が課せられてしまいます。
資金を出し合って不動産を買うと、共有名義になることは避けられません。共有名義のメリット、デメリットをよく知った上で資金計画を立てると同時に、万が一の際の心構えもしておきたいものです。