新たに始まったインボイス制度とは?
インボイスと不動産投資の関係
2023年10月5日
2023年10月1日より「インポイス制度」がスタートしました。
反対署名などでも騒がれたインボイス制度ですが、一体どんな内容なのでしょうか。簡単に解説するとともに、不動産投資でインボイスが必要なケースについてもご紹介します。
インボイス制度とは? 登録しないとどうなる?
インボイス制度とは、2023年10月1日から導入された適格請求書などの発行・保存方式のこと。インボイスを日本語に直すと、適格請求書となります。
企業が消費税を国に納める際、これまでは自社の売り上げで得た消費税額から、仕入れの時に支払った消費税額を差し引いて、残りの金額を納めればいいことに。ところがインボイス制度の導入で、この計算方法にさらに条件がつくこととなったのです。
インボイス制度の導入に当たって、企業や個人事業主は「適格請求書発行事業者」に登録するかどうかの判断を迫られました。登録した事業者は、適格請求書(インボイス)が発行できるようになります。登録していない事業者の発行した請求書は、適格請求書とは認められません。
そして消費税を国に納める際、売り上げで得た消費税額から差し引きできるのは、仕入れ時に適格請求書に基づいて支払った消費税額のみとなったのです。
仕入れ先が登録していない事業者だった場合、企業にとっては、仕入れ時の消費税額分だけ儲けが減ることになってしまいます。そのため、登録していない業者とは取引を停止する企業が続出するのではと予想されているのです。
インボイスが不動産投資家に与える影響
ではこのインボイス制度、不動産投資とどう関係してくるのでしょうか。
不動産投資では、購入した物件を誰かに貸すことで、家賃という収益を得ます。所有物件の入居者はすべて個人で、借りた目的が借主の自宅であれば、インボイスはほぼ関わりのない制度と思っていいでしょう。
しかし、所有物件の中に店舗や事務所がある、物件を自宅兼事業所として使っている入居者がいる場合、借主からインボイスの発行を求められる可能性があります。
あまり意識していないかもしれませんが、実は家賃にも消費税がかかっています。当然、借主の店舗や事務所としては、売上げで得た消費税から家賃にかかっている消費税分を差し引いて申告したいと思うことでしょう。
ところが物件を所有するオーナーがインボイスに登録をしていないと、適格請求書やインボイス対応領収証を発行できません。そのオーナーの物件に入居している店舗や事務所は、家賃にかかっている消費税分だけ売り上げが減ることになってしまいます。
その結果、現在入居している店舗や事務所がインボイス事業者の所有物件に転居してしまう、空室になっている店舗や事務所の入居希望者がなかなか集まらない、といったことが起こる可能性も。場合によっては、現在入居している店舗や事務所から、消費税分の家賃の値引きを求めら競れるかもしれません。
つまり、インボイス事業者にならないと、空室リスクが高まったり、家賃収入が減ったりする可能性があるのです。
適格請求書発行事業者には、申請すれば簡単になることができます。ただ申請には条件があり、消費税の課税事業者でないと適格請求書発行事業者にはなれません。
現在は、年間売上額が1000万円以下なら、消費税を納めなくていい「免税事業者」でいられます。しかし適格請求書発行事業者になると、消費税を国に納めなければならなくなるのです。
つまり、実質的には納税する消費税分だけ利益が減ることに。さらに経理などの事務手続きも煩雑になりますし、適格請求書や領収書を発行するためのシステムの準備も必要です。
空室リスクを抱えたとしてもインボイスに登録しない道を選ぶか、設備費や人件費をかけても登録事業者になるか。メリットとデメリットをよく考えて、対応を選択する必要があるでしょう。