賃貸物件の更新料は、何のために支払うのか
2023年09月04日
アパートやマンション、借家などの賃貸物件に住んでいたり、土地を借りていたりすると、契約の更新時に貸主から更新料を請求されることがあります。
更新料は、必ず支払わなければいけないものなのでしょうか。また、相場はどのくらいなのでしょうか。貸主も借主も、この機会に更新料の基本を押さえておきましょう。
賃貸借契約の更新料には法的根拠がない
一般的に、アパートやマンションなどを借りる際には、契約期間を設定します。契約期間の終了後もその物件に住み続けたい場合は、契約を更新する必要があります。その契約更新時に、月々の家賃とは別に貸主に支払う手数料が「更新料」です。
実は賃貸借契約の更新料には、法的な根拠がありません。借家や借地について定めた「借家借地法」や「民法」には、更新料について一切書かれていないのです。
では「貸主から更新料を請求されても、借主は支払いを拒否できるのか?」というと、そうとも限りません。
家や土地を借りる際に結んだ賃貸借契約書に、契約更新時にかかる更新料について書かれていた場合には、支払いを拒否することはできません。支払わなかった場合には、賃貸借契約を破棄されてしまいます。
ただし、契約書に更新料についての記載がなかった場合は、支払いを拒否できます。貸主は、更新料が受け取れないからといって、契約を破棄したり、借主を追い出したりといったことはできません。
つまり更新料を受け取りたい貸主は、最初から賃貸借契約書に「契約更新時には、家賃何ヶ月分の更新料が必要何になる」と明記しておく必要がある、ということです。
賃貸借契約の更新料には、複合的な性格がある
更新料は、賃貸借契約の更新にかかる手数料といいました。契約更新の手続きは、物件を管理している管理会社や司法書士などが行うことも多いので、その人件費や報酬をまかなうために更新料が必要になるのです。
しかし更新料は本来、入居時に支払う礼金と同じように、貸主に対して「契約を更新してくれてありがとうございます」といった意味合いで支払うものでした。そのため関西を中心に、更新料を支払うという慣習がない地域もあります。
場合によっては、入居者を集めるために家賃を安めに設定して、礼金や更新料で収入を補填するという貸主もいます。
また、火災保険料や家賃保証会社の保証料などを、更新料としてまとめて請求するケースもあります。更新料はあくまで貸主の手数料で、火災保険料や家賃保証会社の保証料、管理会社の手数料などは、更新料とは別立てで請求する場合もあります。
なぜ更新料が必要なのかはケースバイケースで、一概には言えません。更新料は複合的な性格を持ったもの、と考えておくのがいいでしょう。
更新料の相場はどれくらい?
国土交通省住宅局が行っている「住宅市場動向調査」の、2022年度(令和4年度)の調査結果が2023年5月19日に発表されました。それによると、賃貸住宅の45.8%が更新料を設定しています。
更新料が必要な物件での金額の内訳を見ると、家賃1ヵ月が77.2%と一番多くなっています。次いで、家賃2ヵ月分が9.8%、家賃1ヵ月分未満が7.9%。中には家賃3ヵ月分以上の更新料が必要になる物件もありました。
更新料には法的な根拠がないため、金額は貸主が自由に決められます。しかし、相場としては家賃1~2ヵ月分と考えておけばいいでしょう。
過去には、賃貸借契約更新時の更新料について裁判で争われたケースもあります。その際の最高裁判例では、1年ごとの契約更新で家賃3ヵ月分以下が適法とされました。
更新料については、賃貸借契約書に明記するだけでなく、口頭でもきちんと説明をしておきたいものです。そのほうが貸主も借主も気持ちよく賃貸借契約が結べることでしょう。