住宅ローン特約は「契約に盛り込まれているから安心」とは限らない
2023年7月24日
マイホームを購入する際に結ぶ売買契約書には、「もしも住宅ローンが承認されなかった場合は、契約を解除できる」という「住宅ローン利用の特約(住宅ローン特約)」を盛り込んでおくことが一般的です。
しかし、住宅ローン特約があるだけでは万全とはいえません。その理由や、注意すべき点をご説明します。
一口に「住宅ローン利用の特約(住宅ローン特約)」といっても、実際には大きく2つのタイプに分かれます。ひとつは「解除条件型」、もうひとつは「解除権留保型」です。
解除条件型は、売買契約の際に定めた期限までに住宅ローンの審査が通らなければ、自動的に売買契約がなかったことになります。契約解除の意思表示をする必要はありませんし、もちろん違約金なども求められません。
解除権留保型も、売買契約の際に期限を定めるところまでは一緒です。ただし住宅ローンの審査が通らなかった場合、それだけでは契約解除にはなりません。期日までに「ローンが下りないので、売買契約を解除したい」と売主に申し立てて、初めて売買契約が解除できます。
解除条件型でも、何らかの理由で住宅ローン審査に時間がかかり、期日を過ぎて売買契約が解除されてしまうというリスクはあります。そういったトラブルを見越して、ある程度の余裕を持った期日を設定するのが一般的です。
A銀行では審査が通らなかったので、別の金融機関に改めて住宅ローンの申し込みをしたいということもあるでしょう。売主の了承が得られれば、最初に決めた期限までの間に「売買契約変更合意書」を作って、期限を延長することができます。
もちろん、売り主が期日の延長に同意しなければ、最初に決めた期限で売買契約は解除されてしまいます。ただ、改めて買い手を探すのは手間がかかりますから、ほとんどの売主は期限の延長に応じてくれるはずです。
解除権留保型の住宅ローン特約に潜む落とし穴
注意しなければならないのは、住宅ローン特約が解除権留保型だった場合です。解除権留保型では、期日までに買主が売買契約の解除を申し入れても、売主が了承しなければ契約解除となりません。
例えば、A銀行の住宅ローン審査に通らず、売買契約の解除を申し入れたとしましょう。ところが、物件を早く処分したい売主が契約解除に応じず、「B銀行なら審査に通るかもしれない」と言ってくることがあります。
買主には売買契約を遂行する義務がありますから、改めてB銀行に住宅ローン審査を申し込まなければいけません。そしてB銀行、Cローンと次々に審査を受けさせられ、最終的には不利な条件の住宅ローンを組まなければならなくなってしまうことも。
そういった事態を避けるためには、まず、住宅ローン特約がどちらのタイプなのかしっかり確認しましょう。
解除権留保型だった場合も、「A銀行の住宅ローン審査が通らなければ、売買契約の解除を申請できる」といったように、細かい条件まで決めておくことでトラブルを回避できます。
住宅ローン特約が売買契約書に盛り込まれているだけでは、決して安心できません。どんな内容なのか、どういった場合に契約解除できるのかをしっかり確認して、必要なら細かい条件を設定できるよう交渉しましょう。
また売買契約に書かれた内容は、必ず遂行するよう法律で義務づけられています。内容に納得できなければ署名捺印しない、期日の延長など内容を変更する場合は口頭ではなく、正式な書面を作って売主・買主ともに確認するよう徹底したいものです。