不動産取引の重要事項説明書とは?
実は不要なケースも
2023年7月10日
不動産の売買契約では必ず、買主に対して「重要事項説明書」が渡されます。これは法律で定められていることで、基本的には省略できません。
では不動産取引の重要事項とは、一体どんなことなのでしょうか。取引をスムーズに行うためにも、最低限の内容は押さえておきたいものです。
不動産取引の際には、契約を結ぶ前に必ず「買主に対して重要事項の説明をしなければいけない」とされています。これは宅地建物取引業法の第35条に記載されています。
不動産取引では専門的な知識が必要になりますが、ほとんどの買主は不動産取引の経験が少なく、知識もそれほどありません。そのため買主が不利益を被ることがないよう、法律で保護しているのです。
重要事項で説明すべき内容についても、宅地建物取引業法で定められています。具体的には「売買物件について」と「契約条件について」の2つです。
売買物件についての重要事項には、土地の形や建物の構造のほか、「その物件に対して、建築基準法などの法律でどんな制限が設けられているのか」「水道・電気・ガスの整備状況はどうなっているのか」などが含まれます。
契約条件についての重要事項では、「どういった場合に契約が解除できるのか」「契約がスムーズに行われなかった場合の損害賠償や違約金」といったことまで含めて、契約内容について詳しく説明されます。
また上の2つに含まれない事柄でも、購入するかどうかの判断に影響すると思われるポイントは、すべて説明しなければなりません。例えば「国土交通省が定める津波災害地域である」といった、法令にまつわることなどです。
重要事項の説明がいらないケースもある
法律で義務づけられている重要事項の説明ですが、実は例外的に「しなくてもいい」ケースがあります。それは、不動産会社などの仲介業者を入れずに、個人と個人で売買をする場合です。
親族や知人など個人同士での売買では、どちらも詳しい知識を持っていないことがほとんどです。法律で厳しく縛ってしまうと、取引が進まなくなってしまうこともあるでしょう。そのため「個人間の取引では重要事項の説明を省ける」とされているのです。
しかし、重要事項の説明しなかった結果、言った言わないのトラブルに繋がってしまうことも。できれば個人間の取引であっても、重要事項説明書を作ってトラブルを未然に防ぎたいものです。
実はそのほかにも、重要事項の説明を簡略化できるケースがあります。それは買主が不動産会社の場合です。
不動産会社はプロなので、不動産や取引に必要な知識はすべて持っていると見なされます。そのため、重要事項説明書を渡すだけでよく、口頭での説明は省略できるのです。
重要事項の説明ができるのは、宅地建物取引士だけ
不動産取引にまつわるすべての重要事項は、「重要事項説明書」という書面にして買主に渡すと同時に、口頭で説明しなければなりません。
重要事項説明書を作成できるのは、国家資格である「宅地建物取引士」を持っている人だけです。宅地建物取引士以外が作成した重要事項説明書には、法的な効力がありません。
そして、重要事項の説明を口頭で行うのも、宅地建物取引士に限られています。重要事項の説明の際には、まず宅地建物取引士証を提示してから行わなければならないとされています。
重要事項の説明をする際に、「宅地建物取引士証を提示されなかった」「重要事項説明書を渡されただけで説明がなかった」「重要事項説明書に書かれた内容の一部が、口頭での説明で省かれた」「重要事項説明書に書かれていないことを説明された」といった場合は、すべて法令違反となってしまいます。
不動産取引において、重要事項の説明とはそのくらい大切なものです。後々のトラブルを避けるためにも、重要事項についてしっかり確認してから、売買契約を結ぶようにしましょう。