賃貸住宅のカスタマイズ、どこまでなら許される?
2023年6月19日
賃貸住宅から退去する時には基本的に、入居した時と同じ家屋の状態になるよう「原状回復」をしなければなりません。でも住んでいるうちに、「壁に写真を貼りたい」「ここに棚を作りたい」といったこともあるはず。
賃貸住宅のカスタマイズは、どの程度までなら許されるのでしょうか? 限度を超えてカスタマイズした場合、どんなペナルティがあるのでしょうか? 詳しく見てみましょう。
賃貸住宅を借りる際は、家主と入居者の間で賃貸契約を結びます。賃貸契約書には、「退去時には、入居者が家屋を原状回復する」といった内容が盛り込まれているのが一般的です。
賃貸契約に「原状回復」の項目がある場合、壁や柱に傷をつけたり、間取りを変更したりといったことは許されません。つまり賃貸住宅のカスタマイズは、基本的にできないと考えておきましょう。
もし、壁に穴を開けてしまった、柱が削れてしまったといったことがあれば、入居者が費用を負担して修繕しなければなりません。
退去時に修繕を行う場合は、入居時に支払った「敷金」や「保証金」から修繕費を支払うことになります。もし敷金の金額を超えて修繕費用がかかってしまった場合、その分も入居者が負担することとなります。
どんな住宅でも、長年住んでいれば次第に古びてきます。毎日掃除をしていても、随所に汚れや黄ばみ、色落ちなどが出るのは避けられません。
そういった、いわゆる自然な「経年劣化」については、原状回復しなくていいとされています。通常の住まい方の範囲であれば、畳やフローリングが擦り減ってしまったとしても、入居者が修繕する必要はありません。
問題は、この「通常の住まい方の範囲」です。どの程度まで「通常の住まい方」と見なされるかは、ケースバイケースといっていいでしょう。
たとえば、壁に画鋲や押しピンで写真やカレンダーを飾るくらいなら、通常の使い方と見なされます。退去時に、壁に画鋲の跡がついていたとしても、修繕する必要はありません。
一方、壁に釘やネジを使った場合、壁の下地ボードまで傷ついてしまうので、入居者負担で修繕する必要があります。でもこれは、あくまで法律上の話。実際には、数カ所程度の釘の跡なら問題視にされないことがほとんどです。
だからといって勝手に棚などを造ると、退去時に高額の修繕費がかかってしまうことも。どうしても棚などを作りたい場合は、壁や柱を傷つけない突っ張り棒タイプの棚にしておきましょう。
近年では、入居者がカスタマイズできる賃貸物件が人気となっています。カスタマイズOKの物件の多くは、築年数が経った古い建物です。
古い建物をリフォームしようとすると、かなりの費用がかかります。それなら古いまま入居者を募集し、自由にカスタマイズしてもらったほうがいいという家主側の考えと、カスタマイズできることに魅力を感じる入居者側のニーズがマッチした結果でしょう。
しかしカスタマイズOKとはいっても、家主側と入居者側の認識のズレからトラブルに繋がってしまうことも。「まさかここまでカスタマイズするとは思ってなかった」「いくら自由にできるといっても、カスタマイズする際には家主に一声をかけてくれると思っていた」といったケースです。
カスタマイズの詳しい内容や方法、修繕が必要になった際の費用負担などは、賃貸契約書に盛り込まれていないことが少なくありません。そのためのトラブルも頻発したことから、国土交通省ではカスタマイズOK物件の賃貸契約を結ぶ際は、「DIY工事の詳細な取り決めに関する合意書」などを交わすことを推奨しています。
カスタマイズOKであったとしても、契約の際には「どこまでカスタマイズできるのか」「カスタマイズの際に家主に申請は必要か」「配管などの修繕費用は、家主と入居者のどちらの負担か」といった細かい内容を確認しておきたいものです。