住宅ローンが残っていても住み替えできる? 「住み替えローン」とは?
2023年6月12日
マイホームの住宅ローンを返済中なのに、転勤や家族構成の変化などの事情で引っ越しが必要になった……。こういったケースは決して珍しくありません。
住宅ローンの残っている家を売って、新たに購入した家に住み替えるための方法について、詳しく解説します。
基本的に、住宅ローンを組んで購入した家を売却するには、残っている住宅ローンを完済しなければいけません。
住宅ローンで購入した不動産には、ローン契約の時点で「抵当権」が設定されています。抵当権とは、「万が一ローンが返済できなくなったら、融資した金融機関が不動産を競売にかけて、売れた金額をローンの残債に充てられる」という権利です。
不動産を売却する際には、抵当権を抹消する必要があります。そのため多くの場合、物件引き渡し当日に、買主から受け取ったお金で住宅ローンの残額を完済して、抵当権を抹消するという手続きを行います。
不動産の売却金額が住宅ローンの残債を上回っていれば、何の問題もありません。売却金額がローン残債に届かなかったとしても、不足分を自己資金で埋めることができるなら、特に支障なく住み替えできるでしょう。
問題は、住宅ローンを完済できるほどの金額で売れず、自己資金もないという状態です。そういった場合の解決策のひとつに、「住み替えローン」があります。
住み替えローンは、旧居のローン完済に必要な金額を、新居の購入金額に上乗せして借入するというものです。取り扱っている金融機関は限られますが、中にはいわゆるメガバンクも含まれています。
住み替えローンのメリットは、自己資金がなくても住み替えできることでしょう。自己資金が貯まるのを待たなくていいので、転勤などのタイミングを逃さず住み替えられます。
デメリットとしては、一般的な住宅ローンより金利が高く、審査が厳しいこと。その理由は、新居の金銭的価値よりも高い金額を融資する、「オーバーローン」と呼ばれる状態になるからです。
住宅ローンを提供する金融機関は、新居となる不動産に対して抵当権を設定します。しかしオーバーローンの場合、新居を競売にかけたとしても、ローン残債より少ない金額しか得られません。つまり金融機関にとってハイリスクなので、審査が厳しく、金利も高くなってしまうのです。
また住み替えローンでは、旧居のローン完済と新居の引き渡しを同じ日にしなければなりません。これは、旧居の抵当権抹消と、新居への抵当権設定の間にタイムラグを起こさないためです。
たとえ住み替えローンの審査に通っていても、旧居売却や新居購入のタイミングが合わないと、融資が受けられなくなることもあるので注意が必要です。
住み替えローンが利用できなかったとしても、まだ諦める必要はありません。住宅ローンの残債が数百万円程度であれば、ダブルローンで解決できることもあります。
ダブルローンとはその名の通り、旧居と新居で二重のローンを組むことです。旧居の住宅ローンを返済しながら、新たな住宅ローンを組んで新居を購入し、2つの住宅ローンを同時に返済していきます。
もちろん、旧居の住宅ローン完済までは、返済金額が大きな負担になります。旧居を売りに出しても、タイミングよく買い手がつかなかった時などの緊急手段と考えておきましょう。
反面、住み替えローンよりもダブルローンのほうが、低い金利で借り入れができるというメリットも。またダブルローンを組む際には、旧居のローン残債を審査対象から外して、新居の住宅ローン審査をしてくれる金融機関もあります。
いずれにせよ住み替えでは、不動産会社や金融機関との密な連携が欠かせません。住み替えを考えるなら、金銭的な事情を包み隠すことなく不動産会社に相談して、アドバイスを受けるのがいいでしょう。