不動産投資で重要になる「表面利回り」と「実質利回り」
2023年6月7日
不動産投資用物件の広告に書かれている「利回り」。どういう意味なのか、ご存じでしょうか。
実は不動産投資の利回りには、いくつかの種類があります。中でも重要なのが「表面利回り」と「実質利回り」です。その違いや計算方法について解説しましょう。
「利回り」は、不動産投資だけでなく証券投資など、投資の世界では一般的に使われる言葉です。簡単に言うと、投資した金額に対してどのくらいの利益が得られるのかを示した数値です。
不動産投資の利回りには「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」「現行利回り」などいくつかの種類があります。その中でも、ぜひ知っておきたいのが「表面利回り」と「実質利回り」です。
「表面利回り」は物件の金額に対して、1年間で得られる家賃収入はどれくらいの割合なのかを示した数値です。「グロス利回り」と呼ばれることもあります。
計算方法は簡単で、
年間家賃収入÷物件価格×100=表面利回り(%)
で求められます。不動産広告に表示されている利回りは、基本的にこの表面利回りです。
しかし実際に投資を始めてみると、メンテナンスや修繕の費用など、物件を維持するための経費がかかることが分かるでしょう。そういった経費を計算に入れて導き出した現実的な数値が、実質利回りです。
実質利回りの計算方法は、以下のようになります。
(年間家賃収入-年間の必要経費)÷(物件価格+購入時の諸費用)×100=実質利回り(%)
実質利回りは、「ネット利回り」「NOI利回り」と呼ばれることもあります。経費も計算に入れて導き出すため、当然のことながら、表面利回りよりも実質利回りのほうが数値は低くなります。
不動産投資を行うなら、表面利回りよりも現実的な数値である実質利回りに注目するべきでしょう。しかし実質利回りは表面利回りと違い、広告などで表示されることはありません。
その理由は2つあります。ひとつは「必要経費」の範囲が、法律などで定められているわけではないこと。もうひとつは、物件の維持にかかる必要経費は、実際に物件を購入して運営してみないとはっきりした金額が分からないからです。
ですから実質利回りは、物件の購入を検討している人自身が計算しなければなりません。そのためにも購入前には実際に物件を見て、状態をチェックしておいたほうがいいでしょう。
さらにいうなら、物件の維持にかかる経費は毎年変化します。築年数が経つごとに、維持にかかる経費も増えていくことでしょう。
実質利回りも、ずっと同じままではありません。投資用物件を購入する際には、そのことを念頭に入れておきましょう。
不動産投資の利回りには、ほかにも「想定利回り」と「現行利回り」があります。いずれも、アパートやマンションを1棟丸ごと購入した場合に使われる考え方です。
想定利回りとは、購入した物件が満室だった場合の家賃収入から計算した表面利回りです。実際には空室になる期間もある上に、必要経費などが計算に含まれていないため、想定利回りどおりの利益が上がることはありません。
現行利回りは、現在の入居状況から得られる家賃収入を元に計算した表面利回りです。現在空室があれば、その分の家賃収入は含めずに計算するので、想定利回りよりは現実的だといえます。
一般的に、不動産広告に書かれている利回りの多くは、想定利回りとなっています。ですから不動産広告を見る際には、どの利回りが書かれているのか、数値の計算方法や根拠を確認するよう心がけたいものです。