建物の「耐震」「免震」「制震」、それぞれの構造の違い
2023年5月26日
地震大国といわれる日本では、建築基準法で「震度6~7でも倒壊しない建物」を造るよう義務づけられています。
地震で倒壊しないようにする構造として、「耐震」「免震」「制震」の3タイプがありますが、違いはご存知でしょうか。改めてそれぞれの特徴やメリット・デメリットを見てみましょう。
耐震構造は、建物そのものを強く堅くして地震の揺れに対抗するものです。具体的には、壁の内部に筋かいを入れたり、柱を太くしたり、柱と柱の接合部を金具で補強したりといった工事を行います。
3つの構造の中では最も一般的で、一戸建て住宅やマンションだけでなく、ビルや公共施設などさまざまな建物に採用されています。
メリットは建築費用が安く、工期も短くて済むことでしょう。メンテナンスや補強工事も、比較的簡単に安価でできます。
デメリットとしては、地震の揺れがダイレクトに建物に伝わるので、3つの構造の中では揺れが一番大きいことでしょう。さらに上層階になるほど、揺れを大きく感じます。
何度も地震に遭うと構造材の負担が積み重なって、建物が破損することも。放置すると最悪の場合は倒壊することもあるので、定期的なメンテナンスが欠かせません。
揺れが伝わらないようにする「免震構造」
免震構造とは、地面と建物を切り離すことで、揺れが建物に伝わらないようにするものです。地中に特殊な免震装置を取り付けて、その上に建物が乗っているような構造になっています。
免震装置は、揺れを抑えるダンパーや、ゴムのように柔軟性のある緩衝材などで造られています。地震の際は免震装置が揺れを吸収するので、建物はほとんど揺れません。
メリットは、揺れが少ないことに加えて、建物の損傷も起こりにくいことでしょう。地震では、外からは見えない壁内部の構造物や配管などが損傷することがありますが、免震構造ならそのリスクを低く抑えられます。
デメリットとしては、建築コストがかかること。免震技術をもつ施工会社もそれほど多くないため、現在は大規模マンションなどでしか採用されていません。
また、免震は横揺れ地震には大きな効果を発揮しますが、縦揺れにはあまり効果がありません。定期的なメンテナンスも必須で、そのランニングコストも高額になっています。
制震構造は、建物内にダンパーなどを取り付けて、地震の揺れを小さくするものです。ごく簡単に言うと。地震の揺れは建物に伝わるものの、建物自体が柔軟に変形して揺れを吸収してくれます。
地震では上層階になるほど揺れが大きくなるものですが、制震構造では上層階のほうが揺れが小さくなります。反対に1階では、地面と同じくらい揺れるのが、制震構造ならではの特徴です。
制震構造のメリットは、免震構造よりメンテナンスが簡単な上に安価で済むことでしょう。建物の損傷も、耐震構造より起こりにくくなっています。
免震と耐震のいいとこ取りのような制震構造ですが、もちろんデメリットもあります。制震構造は地盤の影響を受けやすく、軟弱な地盤の土地では十分な効制震果が得られないという実験結果か出ています。
最近では、免震と制震を兼ね備えた大型マンションや、耐震と制震を採用した戸建て住宅のように、2つの地震対策を取り入れた不動産も少しずつ増えてきています。
そういった不動産は建築コストがかかるため、売買価格も高くなることが一般的です。周囲の相場よりも高めの不動産は、地震対策にコストをかけているのかもしれません。
耐震・免震・制震のいずれの地震対策にも、メリットとデメリットがあります。不動産を購入する際は、それぞれの特徴を知った上で、どの地震対策を採用しているのかチェックしてみるといいでしょう。
また、どの構造で建てられていても、地震による被害をすべてなくせるわけではありません。万が一に備えて、家具を固定する、ガラスが飛散しないようシートを貼るといった、自分でできる地震対策をしておくことが大切です。