仲介手数料の上限額「3%+6万円」の「6万円」とは?
2023年5月17日
不動産の売買をする際には、売主と買主との間を不動産業者が仲介することがほとんどでしょう。取引が成立すれば、不動産業者には仲介手数料を支払うこととなります。
仲介手数料は、法令によって上限額が「売買価格の3%+6万円」と定められています。どうしてこんな中途半端な金額となっているのか、その理由をご存知でしょうか。
不動産売買の仲介手数料は、取引が成立したときに不動産業者が得る報酬です。仲介手数料は成功報酬となっていて、契約が成立しなかったり無効になったりした場合は、仲介手数料を請求することはできません。
仲介手数料は、売主と買主の両方がそれぞれ支払うことになっています。例えばあなたが家を売った場合は、売却を依頼した不動産業者に仲介手数料を支払います。反対に家を買う場合には、物件を紹介してくれた不動産業者に仲介手数料を支払います。
売主から売却を依頼された不動産業者が、買主を見つけて契約を成立させた場合、当然のことながら売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れます。これを「両手取引」といいます。
仲介手数料は、国土交通省が定めた「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」という告示によって、最大でも「物件価格の3%+6万円(税別)」しか請求してはいけないと定められています。
しかし、なぜ「物件価格の3%」ではなく「+6万円」となっているのでしょうか。その理由をご説明しましょう。
実は「物件価格の3%+6万円(税別)」という計算方法は、簡単に計算するための速算法です。実際の法令では、次のように定められています。
ですから3000万円の物件だった場合、仲介手数料は
200万円×5%=10万円
(400万円-200万円=200万円)×4%=8万円
(3000万円-400万円=2600万円)×3%=78万円
このような計算式で、合計96万円(税別)となります。これでは大変に面倒です。
もしも400万円以下の部分についても3%ならば、400万円×3%=12万円となります。しかし実際には10万円+8万円=18万円なので、とりあえず「物件価格の3%で計算をしてから、差額の6万円を足す」という速算法が使われているのです。
なぜこんな法令になっているのか
なぜ仲介手数料の上限について、「200万円以下」「200万円を超えて400万円以下」といった形で刻まれているのでしょうか。その理由は法令ができた時代にあります。
「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」が告示されたのは、1970年のこと。当時は東京23区内の新築マンションでも1000万円程度で購入できました。400万円以下の物件も、数多くあったのです。
そのため格安物件の売買でも、不動産業者が一定の仲介手数料を受け取れるようにという意図で定められました。現在では、ほとんどの物件が400万円を超えているため、速算法で計算しても何の問題もありません。
約50年ぶりに法令が改正され、仲介手数料が変更に
実は2018年、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の一部が47年ぶりに改正されました。変更された内容は、「物件価格が400万円以下の場合、売主に最大18万円の仲介手数料を請求できる」というものです。
これまでの法令に従って計算すると、物件価格が200万円の場合は最大10万円、300万円の場合は最大14万円の仲介手数料しか請求できませんでした。しかし法令の改正で、400万円以下の物件については、一律で最大18万円の仲介手数料が請求できるようになったのです。
これは、国の空き家対策として行われた改正です。不動産会社が赤字を恐れて格安物件の取り扱いを避けることがないよう、仲介手数料のほかに家屋調査費屋交通費といった実費も請求できるようになりました。
ただし、変更になった仲介手数料は売主に対してだけで、買主の仲介手数料には変更はありません。
仲介手数料については、不動産業者の事務所の見やすい場所に提示しなければならないとされています。業者によって、税別で表示しているか、税込みなのかといった違いもあるので、気になる場合は事前に確認してみましょう。