住宅ローンの固定金利は、どうやって決められている?
2023年4月14日
住宅ローンの金利には、変動金利タイプと固定金利タイプがあります。
変動金利タイプの金利を決める基準については、前の記事でご紹介しました。
今回は、固定金利タイプの金利がどうやって決められているかについて解説していきます。
住宅ローンの固定金利は、10年国債の利回りが基準になっています。国債とはご存知のとおり、日本政府が国の運営資金を集めるために発行する債券のことです。
国債を買った人は、国にお金を貸していることになります。つまり国の借金ですから、期限が来たら利息をつけて返してもらわなければいけません。返済期限が5年なら「5年国債」、10年なら「10年国債」と呼ばれています。
国債は1~3ヵ月ごとに、条件を変えて新規発行されています。「新発10年国債」は直近に発行された償還期間が10年の国債という意味で、その利回りが住宅ローンの固定金利を決める指標となっているのです。
住宅ローンの固定金利の指標になっているのは、新発10年国債そのものの金利ではなく「利回り」です。では、利回りとはどういうものなのでしょうか?
日本政府が国債を発行する際に、「買った人にはこれだけの利息を払います」と約束した金利を「表面利率」といいます。国債を買った人は、償還期限が来たら元本の金額をそのまま返してもらえるだけでなく、国債を持っている期間は毎年、表面利率に応じた利息を受け取れます。
国債は、新規発行されたものを銀行や証券会社が販売する以外に、市場でも売買されています。市場では、買いたい人が多くなれば国債の価格が上がり、買いたい人が少なければ価格が下がります。
市場取引では国債の価格が常に変動しているため、安く買って高く売れば、株取引のように売買益を得ることもできます。その売買益を国債の表面利率に加味して計算した収益率が「利回り」です。
住宅ローンの固定金利は、新発10年国債の利回りに1%程度のコストが上乗せされて決められています。そのため、利回りが上がれば固定金利も高くなり、利回りが下がれば固定金利も低くなります。
住宅ローンの固定金利の指標となっている新発10年国債の利回りは、国債の市場取引状況によって日々変化しています。簡単に言うと、好景気になって物価が上がってくると国債の利回りも上がり、景気が悪くなると利回りも下がっていきます。
国債の市場取引をしている投資家たちは、今後の市場動向や経済活動の変化を予測して、取引を行っています。現在、物価が上昇するインフレーションが起こっていなくても、投資家が「近々インフレが起こるだろう」と予測すれば、国債の利回りは上がります。つまり、国債の利回りは投資家の予測に左右されるのです。
住宅ローンの変動金利は、現在の経済市場に合わせた短期プライムレートが指標となっています。言い換えれば「今」を反映しているといっていいでしょう。
対して固定金利の指標となっているのは、投資家の将来予測によって変わってくる新発10年国債の利回りです。言うなれば「未来」が反映されているのです。
そのため住宅ローンの固定金利は、変動金利よりも先に変動する傾向にあります。中には「変動金利が上がってきたら固定金利に借り換えよう」と考える人もいるようですが、変動金利が上がる前に固定金利が上がっていることがほとんどでしょう。
住宅ローンの固定金利には、全期間固定金利型と固定金利期間選択型があります。厳密に言うと、全期間固定金利型と固定金利期間選択型では、指標にするものが違っているのです。
ここまで説明してきたように、全期間固定金利型の指標となるのは新発10年国債です。固定金利期間選択型は、「円金利スワップレート」を指標にしています。
円金利スワップレートとは、変動金利と固定金利を交換する「金利スワップ」と呼ばれる取引をする際の金利のこと。円金利スワップレートは国債の利回りとほぼ連動しているため、全期間固定金利が上昇した時には、固定金利期間選択型も上昇すると考えていいでしょう。