分譲マンションの共用施設、いつまでもあるとは限らない

分譲マンションは、購入した人だけが使える「専有部分」と、住んでいる人全員で権利を分け合う「共用部分」があります。共用部分といえば一般的に、エントランスやエレベーター、共用廊下、ゴミ捨て場、非常階段などを指しますが、近年では豪華な共用設備を持つ分譲マンションも増えてきました。

人気のある共有施設としては、まず子供を安全に遊ばせられるキッズルームが挙げられます。中には専任スタッフがいて、子供を預かってくれる保育施設を備えているところも。

来客を泊められるゲストルーム、友人を呼んでのパーティーやサークル活動に便利なパーティールームも人気があります。パーティールームにはキッチンがついていることが一般的なので、手料理を振る舞うこともできます。

来客対応や宅配便の発送・受け取り、クリーニングの受付などといった、コンシェルジュサービスを行っているマンションも。共働きで留守がちの家庭にとっては、ありがたいサービスでしょう。

ほかにも共用施設として、自習やリモートワークに使えるスタディールーム、新聞や本が読めるやライブラリールーム、大画面で映像が見られるシアタールーム、さまざまな運動器具をそろえたフィットネスジム、スパやプールなどを備えたマンションもあります

住人ならば、こういった施設が無料または安価で使えるとなれば、魅力的に見えるのも当然です。マンションを購入するに当たって、共用施設で選んだという人も決して少なくありません。

ただ注意しておきたいのは、共用施設はずっと使えるとは限らない、ということ。場合によっては、新築からほんの1年足らずで閉鎖されてしまう場合もあります。なぜそんなことが起きるのでしょうか。

分譲マンションでは、各部屋を購入した区分所有者で管理組合を作って、マンションの設備や施設を管理していくことが一般的です。キッズルームやコンシェルジュサービスといった豪華な共用施設も、管理組合が運営していくことになります。

共用施設の運営にかかる費用は、区分所有者が毎月支払う管理費から出ています。共用施設が豪華であるほど運営費や維持費がかかるので、管理費も高額になりがちです。

例えばシアタールームやフィットネスジムでは、設置した機器のメンテナンスにも経費がかかります。設備が古くなると入れ替えもしなければならず、その費用は決して安くはありません。

実際に入居してから、管理組合の収支報告を見て「こんなに経費がかかっていたとは」と驚くケースも。メンテナンスや入れ替えにかかる費用を賄うため、最初は無料や安価だった設備使用料が引き上げられることもあります。

結果、住民から「維持費用がかかりすぎるので廃止したい」という意見が出たとしましょう。すると管理組合では、施設を維持するか廃止するのか検討しなければいけなくなります。

管理組合の決議は、多数決で決められます。「こんな施設はいらない」という住民が多ければ、その共用施設は閉鎖となってしまいます。

また多くの管理組合では、施設の維持管理を管理会社に発注しています。発注先の管理会社が変わると、「施設の維持管理に対応できない」といった理由で、共用施設が廃止されてしまうことも。

中には、建物内に住民や来客だけが利用できるコンビニエンスストアを設置したマンションもあります。そういった店舗は管理組合と契約して入居していますが、「顧客が住民だけでは経営が成り立たない」と契約更新せずに撤退してしまうことも少なくありません。

分譲マンションの共用施設は、ずっと使えるものと思いがちですが、実は簡単に閉鎖となってしまうものなのです。さらに「利用料が安価だからお得」と思えても、実際には管理費として毎月高額な利用料を支払っているのと変わらないことも、忘れてはいけないポイントです。

分譲マンションを選ぶ際には、共用施設にあまり重きを置かないことをおすすめします。「あれば便利だけど、廃止になってもかまわない」程度に考えておいたほうがいいでしょう。