もしも売買契約を結んだ後に、売主・買主のどちらかが亡くなってしまったら？

売買契約を結んでから実際に物件が引き渡されるまでには、一般的に1～3カ月程度かかります。中古住宅の場合、高齢の売主も少なくないので、その間に売主が亡くなってしまったというケースも、それほど珍しいことではありません。

法律上では、売主や買主が亡くなった場合、契約を遂行する権利や義務は、それぞれの相続人に引き継がれます。

つまり、売主が亡くなったからといって、売買契約が破棄されてしまうことはありません。

ただ売主の相続人が複数いた場合、誰が何を相続するのか、すんなりと決まらないケースもあります。すると事態は少々やっかいになります。

例えば相続人のうちの誰かが勝手に、「私がこの売買契約を引き継ぐことになりました」と代金を受け取って独り占めしてしまい、遺産相続がモメる原因となってしまうことも。

売主が亡くなった場合、売主側はなるべく早急に、それぞれの相続人の持ち分を決めなければなりません。また買主側でも、誰が売買契約を引き継いだのか、正式な相続書類などで確認するようにしましょう。

住宅ローンを利用して家を購入する場合、売買契約を結んだ時点で正式にローン審査を申し込み、承認が下りると住宅ローン契約を結びます。しかし実際に融資を受けるのは、マイホームの引き渡し当日になるのが一般的です。

住宅ローンでは、購入する家を担保にして融資を受けます。不動産の登記上の名義が売主から買主に変更されないと、その不動産を担保にする手続きができないため、すべてを同日に行う必要があるのです。

買主が、住宅ローンの承認前に亡くなると、当然のことながら住宅ローンの承認は下りなくなります。売買契約書の中に、住宅ローンの承認が下りなかった場合は無条件で契約を解除できるという「住宅ローン特約」が盛り込まれていれば、これといったペナルティなく売買契約を解除できます。

問題は、住宅ローンの承認が下りた後、実際に融資されるまでの期間に買主が亡くなったしまったケースです。承認が下りていても、住宅ローンの契約当事者である買主が亡くなってしまったら、融資は受けられません。

売買契約書の「住宅ローン特約」は、あくまで「住宅ローンが承認されなかった場合」に適用される項目です。実際は融資が受けられないのに、承認は下りているので、「住宅ローン特約」による契約解除はできないのです。

「住宅ローン特約」が適用されないケース、そもそも売買契約書に「住宅ローン特約」が盛り込まれていなかったケースでは、売買契約をキャンセルしようとすると違約金を請求されることになります。違約金は売買金額の1～2割程度が相場となっています。